終わりましたー

あれ、前の2つより長いではありませんか…おかしいな
例によってお話中はいいにくかったことなど追記より!
読んでくださった方ありがとうございました´▽`*
なんだかすっきりですね。

40

さて。

「なんだか、いきなり暗くなったと思ったら花火かい。
 今年の祭は変わってるねえ」

黒いものに覆われた後も、気付かずにお店を開いていた屋台主は、不思議そうに言いました。
黒いものに呑まれても、ひとつだけひっそりと明かりを灯したままだった屋台。
「面白いではありませんか」
その屋台に座って小さなお菓子を食べていた人影が言います。
くるくると色の変わる不思議なローブをまとい、微笑みながら言います。
「色々なことが面白い、大変良い年でした。
例えばこの―――追放者のしるしが恋人たちのアイテムとして売れる、というのも面白い。神さまも予想だにしない事態でしょう」
「さすが占い師はよくわからないことを言うねえ」
屋台主は笑いました。

「いたいた占い師さまー」
屋台に走り寄ってきたのはメーテルリンクです。
「占い師さまここ二、三ヶ月お城に寄り付きませんでしたよね。
 色々ごたごたして大変だったのにー」
「知っています。すみませんね」
「結果オーライです」
でも占い外れちゃいましたね!
メーテルリンクは楽しそうに笑うと、また人ごみの中へ走り去ってゆきました。

「……うーん」
突風のような後姿を見送りながら占い師は一人呟きます。
「私は王さまが、今年良い結婚相手に巡り合いますと言っただけで―――
 結婚するとは言ってなかったんですけどね」
それから塔のほうを眺めて、言いました。
「まあいいか、面白いから」

色とりどりの光とともに、
新しい年がやってきます。

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(おしまい)
 

39

「常世の人々は行ってしまいましたね」
塔に開いた大穴の前で、王さまと綾目の大臣は花火を眺めていました。
慣れない道を通ったからか、黒いものと戦ったからか、
実は結構立ち上がる余裕も無く、助けを待っているところです。

「タペストリの事を聞くのを忘れてしまった」
王さまはそんなに残念そうでもなく、言いました。
「……ああ私も」
「何だ」
「いいえ、以前……あの娘を陛下のお相手にどうかなと思ったので」
大臣が気まずそうに、でももう押し付けたりしませんから、と言うと、王さまは笑いました。
「どっちみち無理だろう。もう顔も思い出せないのだから」

異邦人たちの顔かたちは、既に彼らの中で朧になっていました。
おそらく夜が明ければ忘れてしまうのではないかと思うような、印象の薄さです。
「色々な境遇があるものだ。彼らは遠ざけられているのだな」
「……ええ」
「私は遠ざけられているわけではない」
王さまはまっすぐに花火を見つめながら呟きました。
「結婚のことも、運命のことも……来年は考えることにしよう」
「お手伝いします」
若い王さまの言葉に綾目の大臣は嬉しそうです。
なんだか反省会をしているようでおかしくなった二人は、
鮮やかに開く花火の下で、笑い出しました。

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38

本来の打ち上げ台から花火が上がりだしたのを見て、
旅人さんと壁抜けの娘たちはそっとその場を離れました。
塔のてっぺんの部屋で入り口を開いてみると、
道はほんの少し不安定なままでしたが、
危機感を抱かずに通れるくらいにはなっていました。

「私たち帰るわね」
「兄さんもさっさと帰ってきなね」
「あの、助けてくれた人に会ったら、お礼…言っておいてね」
三人の織師たちはあっさりと帰ってしまいました。
声が遠ざかっていき、旅人さんは一人になります。

ここは違う世界なんだな。
そんな風に感じながら、旅人さんは下に広がる世界を眺めました。
さっきはなんだか渦中の人みたいになりましたが、
今あの中に入っていっても、誰も彼に気付かないでしょう。
しかし認識されても今日のようなごたごたが起こるのでは、困ってしまいます。
やっぱり切り離されているのだ、と旅人さんは思いました。
切り離されていなければならないのだ、と。
「もう帰ろうかな……」
呟いたとき。

どすん。
「うっ……!?」
旅人さんは後ろから追突されました
背中にしがみついていたのは、パン屋の少女です。

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「た、旅人さんいなくなっちゃったかと思った」
少女は泣きそうな顔で旅人さんを見上げました。
旅人さんたちがいなくなってすぐに彼らを探し始めた少女ですが、
部屋の中には見当たりません。
もしかして見えなくなってしまったのかもしれないと怯えながら、
必死に塔を登ってきたのでした。
「見つかって良かった」
少女はほっとしたように大きく息を吐きました。

「うん―――見つかって良かった」
旅人さんは微笑みました。
もう少しここに居てみよう、と思いながら。

そうして見えない旅人さんと、
なぜだか彼のことが見えるらしい少女は、
塔を降りていきました。
 

37

黒いものに飲み込まれた人々は、飲み込まれたそのときのまま戻ってきました。
何が起こったのかわからず目を白黒させていましたが、
花火の光と音で最後の花火が始まったのだと考えます。
「今年のお祭はちょっと終わりが早いな」
「本当だね」
北の塔の一部が壊れているのを見て、驚く人もいました。
しかし何かパフォーマンスをしているのだろうと考えたのか、
そこまで問題にする人もいません。
王さまが塔の穴から手を振ると、
見ていた人々もにこにこと振り替えしました。

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月読の大臣たちも、本来の打ち上げ台で花火を上げ始めました。
今年は花火の大盤振る舞いです。

「やれやれ、何とか落ち着きましたね」
城の中を見回って、月読の大臣は溜息を吐きました。
混乱も少なかったためか怪我人も無く、
祭はつつがなく終わりそうです。
最後の花火は早まってしまいましたが、
花火の後も夜が明けるまで賑わうのが通例です。

「結婚の話と織物の話は落ち着いてないですけどねー
 もくろみしっぱい!
 塔も壊れちゃいましたし、王さまからの視線も怖いですね!」
付いて来ていたメーテルリンクが言いました。
「……落ち込むじゃないですか。
 いいですよ、来年に回します」
「おやおやー」
「あの炎は宝の剣の炎でしょう。
 それが今夜見れただけでも、良しとします」
王族至上主義の大臣は言いました。

「さて、祭だというのに動員してしまった部下たちを労ってきましょうかね」
「酒盛り酒盛りー」
「貴女は来なくていいですよ」
「傷心の大臣さまを慰めてあげますう」
 

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